最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「お仕事、ラストスパートがんばってきてくださいね。私、待ってますから……」

「ああ」

秋の風が心地よい。

周りの木々が色づき、葉が落ちて、やがて凍えるような北風が吹きつける頃、志遠さんは私たちのそばに帰ってきて温かく包み込んでくれるだろう。

そのとき、急に晴が泣き出した。志遠さんが驚いたような顔をする。

「どうしたんだろう? ミルクはさっきあげたよな。冷えたのかな?」

私は晴の手や首筋を確認する。

「体は冷えてないので大丈夫です。ぐずってますね」

私は晴を預かり部屋の中に入ると、お気に入りのトイを渡してお歌を歌った。

泣き止んだ晴を見て、志遠さんが関心するような声を上げる。

「赤ちゃんの気持ちがわかるんだな」

「志遠さんも、一緒に暮らせばわかるようになりますよ」

私がどんぐりころころを歌っていると、合わせて志遠さんも歌ってくれた。

美声! そういえば彼の歌を聴いたのは初めてだ。

「仕事だけじゃなくて、パパとしてもがんばらなきゃな」

予期せず父親としての使命感が芽生えたようで、真面目な顔で晴のトイを睨んでいる。

なんだかおかしくなって、思わず声を上げて笑ってしまった。



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