最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「……え、え……」

サンタさん。

いや、待って、誰?

志遠さんだったらチャイムなんて鳴らさないだろうし、頼子さんがこんな手の込んだことをするとは思えない。なにより体格が男だ。

軽く恐怖を感じながら、ドアフォンに応答する。

「…………はい」

『お久しぶりです、ヒメ。ダリルです。シオンサンタじゃなくてすみませんね』

「ダリル!?」

懐かしい声がスピーカー越しに聞こえてくる。私は晴を抱きかかえ玄関へ向かった。

扉を開けると「メリークリスマース♪」とダリルが高らかに声を上げた。

驚いた晴が、ぎゃぁぁあんと泣き出してしまう。

「わっ、驚かせちゃいましたね……ごめんなさい……」

「こちらこそすみません!」

晴をあやして、恐縮するダリルをダイニングキッチンへと案内する。

ダリルは「このダイニング、ロンドンのシオンの家に似てますねー」と部屋を眺めながら入ってきた。

もてなしのお茶を煎れようにも、泣いている晴を置いておくわけにはいかない。

抱っこひもを使おうとすると、ダリルは「おかまいなく、なにもいりませんから」と肩に担いでいた白い袋を床に置いた。

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