最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
思ってもみなかったことを口にされ、ずきんと胸が痛んだ。

イギリスで療養しているというお父様は、私たちのことを認めてくれていないのだろうか。

「そのうえ、企業の危機を放り出して日本に行こうとしたこと。シオンのお父様は、あなたのことを毒婦と呼んでいます」

「そんなっ……」

志遠さんの妻として認めてもらえていないの? もしかしたら、晴のことも……?

私は頭が真っ白になって立ち尽くす。

「ですから、ヒメ。どうかここを出て、シオンとの関係を絶ってください。もちろん、衣食住は世話しますし、金銭的な援助はさせてもらいます。もしも父親がほしければ、それなりの人をご紹介しますし」

「はい……?」

ダリルはチェアから立ち上がり、私たちのもとにやってくる。

私がぐずる晴をぎゅっと抱きしめると、その顔をのぞき込むようにかがんだ。

「やっぱり、子どもには父親が必要ですからね、教育的に。でも、今ならまだハルくんは父親を認識していないから、代理を立てることが可能です」

いったいなにを言っているのだろう。ぱくぱくと口を開くけれど、うまく言葉にならない。

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