最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
私の剣幕に驚いた晴が、さらに声をあげて泣き始める。

ダリルは「……まぁ、そうですよね」と面倒くさそうに漏らし、後頭部をかいた。

「あまりこういう言い方はしたくなかったんですがー……。ヒメが言うことを聞かないと、シオンはなにもかもを失うことになりますよ」

「それは……どういう」

「シオンのお父様は、息子の出方次第で彼からなにもかもを取り上げると言っています。企業の経営権はもちろん、財産の相続権も」

ぎりっと奥歯をかみしめる。これはきっと言うことを聞かない息子への制裁というよりも、私に対する脅しなんじゃないだろうか。

「……志遠さんはすでに社長ですよね。取り上げるもなにも――」

「役員や株主の同意があれば解任することも可能です。すでにジェシカショックで大きな赤を出している。……と言っても、シオンのせいではなく不可抗力ですけどね。とはいえ、シオンを追い出すには今が好機だ」

ごくりと息をのんで晴を抱きしめる。

「しょせん、親にとって息子はコマでしかない。役に立たないなら捨てるしかないんですよ。家柄のいい人たちって、そういう考え方なんです。御子神家も例外じゃない」

ぞっとする台詞を残し、ダリルは玄関で靴を履く。
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