最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
しかし、もう騙されんとばかりにアーサーは娘を睨んだ。

『その心根が変わらない限り、お前には爵位も財産も譲らん。私の死後は陛下に返還する』

『は!? 冗談じゃないわ! 待ってよ!』

アーサーはエレノアの腕を掴み、門の外へ引きずっていく。

『シオン。空港まで車を借りるぞ』

『ええ。航空券を手配いたしましょうか?』

『不要だ。こんな貴族たりえない心根の曲がった娘など、エコノミーで充分だ』

エレノアがぎょっとする。おそらく彼女はエコノミーなど乗ったことはないが、その窮屈さくらい知っていたのだろう。

『ちょ、待って、正気なの!? あんなちっちゃい椅子で十二時間も座ったら、足が曲がっちゃう!』

『経由便にしてやるから安心しろ』

『嘘でしょう!?』

ふたりの姿が見えなくなっても、言い争う声は続いている。

『痛いわよ! 離して! このバカ親父!』

エレノア渾身の悪態を最後に、車のドアがバタンと音を立てて閉じられた。運転手はふたりを空港へと乗せていってくれるだろう。

そして、残された面々は茫然としていた。

頼子さんはおずおずと陽芽に「お怪我はありませんか」と声をかける。

陽芽は「ありがとうございます、大丈夫です」と晴を抱き直した。

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