最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「お金、お返しします」

そう言って、ダリルの胸もとにずいっと紙袋を押し付けた。しかし、ダリルは陽芽の腕の中にそれを戻す。

「返してもらわなくていいです。慰謝料として受け取ってください」

「こんな大金受け取れません」

受け取れ、受け取れない、の応酬を始めたので、俺は「ダリル」と声をかけた。

「金でごまかそうとするのはお前の悪い癖だ。そんなことをしても、一度失った信頼は戻らない。罪は今後の行動でとり返してくれ」

ダリルは観念したのか、苦い顔をして「わかりました」と紙袋を受け取る。

頼子さんから晴を預かって抱き直す陽芽に、ダリルは視線を流した。

「普通は喜んでお金を受け取ると思うんですが」

「え……?」

「そういうところなんでしょうねぇ。シオンがあなたを選んだのは」

ダリルは悔し紛れに言い置き、運転席に乗り込んだ。

陽芽は晴を抱いたまま、ぼんやりと去り行く車を見送る。

「とにかく、陽芽と晴が無事でよかった」

そう声をかけると、陽芽はまだ不安そうな顔でこちらをじっと見つめた。

「あの……志遠さん。大丈夫ですか? お仕事も、志遠さんのお父様も……」

なにを心配しているのだろう。

そういえばダリルは陽芽を騙したと言っていたか。あることないこと吹き込まれて不安をかきたてられたのかもしれない。

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