最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「なんの問題もない。これからはずっとそばにいる」

陽芽と晴の頭を交互になでると、ようやく陽芽は笑顔になって「よかった……!」と息をついた。

頼子さんはコートの裾でこっそりと涙を拭い、一足先に玄関の中へ入っていく。

俺は陽芽の前に膝をつき、晴を抱く手にそっと唇を寄せた。

「し、志遠さん!?」

突然俺がひざまずいたから驚いたのだろう、彼女は慌てた様子で俺を見下ろす。

「陽芽にとって、晴にとって、一番大切な時期にそばにいてやれなかった。この先の人生で俺は償いをしたい」

『罪は今後の行動でとり返す』――自分で口にした言葉だ。俺が胸に手をあてて誓いを立てると、陽芽は目をぱちぱちと瞬いて、やがて口もとを緩めた。

「償いなんてやめてください。この先は一緒に歩いていく、それでいいじゃありませんか」

「陽芽……」

どうしてこう彼女は聞き分けがよくて、欲がないのだろう。

今を幸せに生きることに長けた女性。ないものをねだらず、目の前にあるものを大切に慈しむことができる人。

自分が幸せでなければ、他人の幸せを願うことなどできないだろう。きっと母は俺にそんなパートナーを見つけてほしかったのだ。

俺は立ち上がり晴ごと陽芽を包み込むと、今、目の前にあるこの幸せに感謝した。



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