最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「……それだけ深い恩を感じているということですね」

私が微笑み返すと、ダリルは「ご理解いただけてうれしいです」と言って、コーヒークリームがたっぷり載ったクロドを頬張った。

私がチョコレートとクランチがトッピングされたクロドにかぶりつこうとすると、ダリルは携帯端末を取り出し、私に向けてタップした。

ピロンという軽快なシャッター音が鳴る。

「ダ、ダリル!?」

「報告用です。イギリスを楽しんでもらっている様子をシオンに送ろうと思って」

画面を見せてもらうと、テムズ川を背景に大口を開けた私が写っていた。

「……次はもうちょっとおしとやかなところを撮ってほしいです」

「ははは。善処します」

休憩を済ませ、次に私たちが向かったのは、エメラルドグリーンのイメージカラーが世界的に有名な紅茶屋さん。

「お好きな茶葉はありますか?」

「ええと……ダージリンとかアールグレイなら聞いたことありますけど……」

曖昧な返答は紅茶初心者だとバレバレで、ダリルはこれ以上深く突っ込んでくることはなかった。

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