最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
婚約者や恋人のような存在が、いるいないにかかわらず、私と志遠さんが恋愛関係になることはまずありえないだろう。

「大丈夫ですよ。志遠さんは私のことをチワワと言ってましたから。女として見られていないと思います」

すると、ダリルは眼差しを緩め、いつもの調子でにっこりと微笑んだ。

「ですよねー」

「え、ええ……」

なんだかイラッとするのはどうしてだろう。とりあえず理解してもらえたようで何よりだ。

そんな会話をしていると、外が騒がしくなった。静かな住宅街に車の走行音、そしてドアの閉まる音。どうやら志遠さんが帰ってきたようだ。

私とダリルが玄関まで迎えにいくと、甘くて深いチョコレート色のスーツを着た志遠さんが家に入ってきた。

「お疲れ様です、シオン。今日はたっぷりとヒメをもてなしましたよ」

ダリルの言葉に、志遠さんはこわばった笑みを浮かべる。

「ずいぶんと楽しそうな写真が送られてきたが。言ったはずだ、陽芽には手を出すなと」

「手なんて出していませんよ。おもてなししただけです」

「あの距離で、か?」

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