最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんが顔をしかめる。もしかして、肩を組んで撮った自撮り写真を気にしているのだろうか。

「もしかしてシオン、俺がヒメと仲良くしているのを見て嫉妬を?」

「まさか! 嫉妬なんかするわけがないだろう」

そこまで全力否定しなくても……。なんとなく虚しい気持ちになりながらも、黙ってふたりのやり取りを見守る。

「潔癖だなあ、シオンは。日本人だって肩ぐらい組むでしょう?」

「彼女には恋人がいる。配慮してもらいたい」

「それ、本当にただの配慮ですか?」

ダリルの言葉に志遠さんは眉をひそめる。しかし、ダリルはすぐに「なんでもありません」と肩をすくめた。

「シオンがお望みなら、帰国まで俺が彼女の面倒を見ますよ? 明日は休暇でしょう? わざわざ貴重なプライベートタイムを彼女に割く必要はないんじゃありませんか」

しかし、志遠さんは「不要だ」と簡潔に断って、ダイニングルームへ入っていった。

ダリルは志遠さんのあとを追う。

「ですが、シオン。あまり不用意に女性とふたりきりで出かけるのは。あらぬ誤解を招いても困りますし」

「それは君が心配することではないよ」

その言葉に、なぜだろう、空気がピリッと張り詰めた気がした。

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