最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんは難しい顔のまま視線を落とす。ふたりの間に気まずい沈黙が流れた。

ふと彼が思いついたかのように視線を上げる。

「陽芽。夕食は食べたのか?」

「ああ、ええと、おやつに食べたフィッシュアンドチップスでまだお腹がいっぱいで……」

ちょっぴり膨らんだお腹に手をあてると、志遠さんは「だろうな」と小さく笑った。

「あのフライ、君の顔より大きかっただろう」

フィッシュアンドチップスを頬張る写真を見たのだろう、彼があきれたような声を上げる。

「……軽く食べに行くか。飲む方をメインで」

「え? 今からですか?」

「パブに行くならこのくらいの時間がちょうどいいだろう。君の母も行っていたんじゃなかったか?」

たしかに母は、休日になるとよく父と一緒にパブでビールを飲んでいたそう。

「ぜひ、連れていってください」

志遠さんは家の前に迎えの車を呼びつけた。彼はスーツを着たまま、私はラフな格好で車に乗り込む。

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