最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
たどり着いたのはクラシックなイングリッシュパブ。

もとは銀行だった建物をリノベーションしたというそのパブは、伝統的で気品漂う、大人の社交場といった印象の店だった。

「素敵なお店……」

「気に入ってくれたならなによりだ」

重厚なダークブラウンの木材と大理石を組み合わせた優雅な内装。昨日行った有名百貨店のように豪華な天井の装飾。これが英国流スタンダードなのだろう。

「ゴージャスなのに木であったかい感じ。歴史を感じるというか」

「ああ。日本と違って、この国は古く長く使われているものに価値が生まれる。ヴィンテージの文化だな」

「たしか、新築マンションより中古マンションの方が高いんですよね?」

「よく知っているな」

これも母の受け売りだ。築百年の家というのもざらにあるらしい。

もちろん補修は必要だけれど、構造自体長持ちする設計になっているし、地震などの災害が少ないことも背景にあるだろう。

「ビールは飲めるか? 甘いものの方がいい?」

「ビールも飲めますけど、甘い方が好きです」

「了解」

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