最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
彼が頼んでくれたのはサイダー。と言っても日本でいう〝サイダー〟ではなく、リンゴを発酵させたアルコール飲料、つまりシードルだ。

彼は「これがイギリスの定番だ」といってエールビールを注文した。

ひと口飲ませてもらったら、苦みが少なくコクがあって飲みやすかった。

「君はダリルが撮った写真を自分で見たか?」

「最初の一枚くらいは。……なにかひどかったですか?」

志遠さんが携帯端末のチャットアプリを見せてくれた。私の写真とコメントが並んでいたのだが――。

「わぁ……」

笑顔ではしゃぎまくる私はあまりにも能天気。ダリルとふたりで撮った写真は恋人同士にしか見えなかった。

仕事中のローテンションの人間が見たらドン引きすること間違いなし。

「すみません。志遠さんが一生懸命働いているときに浮かれてしまって」

「……いや、そうではなくて」

彼がふいっと目を逸らし、気まずそうな顔をする。

「ダリルとそこまで親しくするのは、どうかと思うぞ」

「あ……」

先ほども心配してくれていた、私の恋人の話。もしかして志遠さんは、私に浮気心があると誤解しているのだろうか。

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