最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「そんなんじゃありません! その……軽率ですみませんでした……」

「……なら、いい。自分の恋人がほかの男とそんなことをしていたらと思うと、いたたまれなくなった」

苦虫をかみつぶしたような顔で言う。

きっと志遠さんは真面目で正義感の強い人なのだろう。自分の恋人も、さぞ一途に、大切にしているに違いない。

「君の恋人はどんな人だ?」

志遠さんに突然尋ねられ、私はグラスを持つ手を止めた。

「……別に俗っぽい興味じゃないからな。話の中に君の恋人を探す手掛かりがあるかもしれないだろう」

「ああ、なるほど」

私は恋人――山内さんとの出会いを振り返る。まだたった二カ月前の話だから、どんな会話をしたか、はっきりと思い出すことができた。



出会いは少々おかしかったかもしれない。

残業を終えた私は、同僚の女性社員と一緒に会社の近くにある定食屋さんに立ち寄った。

お互いお腹がぺこぺこで家まで我慢できなかったのだ。この時間から自炊するのもつらいので、食べていこうという話になった。

食事を終え、帰ろうとしたときのこと。

『っ、まずい! 財布、落としたかも……!』

隣の席から激しく焦った声が聞こえてきた。

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