最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『大丈夫ですよ、悪い人には見えませんし』

『菊宮さん優しすぎますよ~。私にはなにが大丈夫なのかさっぱりなんですけど~』

そんな論争を経て、結局私はお金を貸すことになり、彼らの分の飲食代を支払った。

『本当にありがとう! このお金は絶対に返すから!』

そう言われて、私は財布を落とした彼――山内大也と連絡先を交換した。

食事を終えたあと、同僚はあきれながら帰っていき、山内さんの後輩も『どうもすいませんでした、お金は山内さんに取り立ててください!』と頭をぺこぺこ下げて帰っていった。

私は山内さんとふたりきりになり、駅までの道のりを雑談しながら歩く。

『お財布は大丈夫でしょうか? 盗難届、出された方が……』

『俺、一度会社に戻って見てきます。もしかしたらデスクに置いてきたかもしれないんで』

そう言って山内さんは、駅前にある高層ビルを指さした。大手企業のオフィスがたくさん入っている有名なビルだ。

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