最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『俺、三積証券で働いているんです。こんなこと言って、身元の保証になるかはわかりませんけど、怪しい男じゃないので安心してください』

最初から疑っていなかった私は、くすくす笑いながら「はい」と返事をした。



――ここまで話を聞いた志遠さんが「同僚の言う通りだ、君はお人よしすぎる。だいたい自分で『怪しい男じゃない』というやつほど怪しいとは思わないか」とヤジを飛ばしてきたけれど、私はとりあえず話を続ける。



結局、山内さんはお金を返してくれた。それどころか、次に会ったときはお礼と言ってご飯をごちそうしてくれた。

優しくて、誠実で、いつもにこにこしている素敵な人――それが山内さんの印象だ。

『あの日、会社にお財布を忘れてよかった。菊宮さんと出会えたので』

トラブルもいつの間にか素敵な出会いのきっかけに変わっていた。

二回目のお食事の日、不意に彼が切りだした。

『菊宮さん。結婚って、ご興味あります?』

まだお付き合いどうこうという話も出ていないのに、突然結婚の話題を持ち出され、私はぽかんとする。

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