最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
と、最後まで話を終えたところで、志遠さんが「二百万!?」と珍しく取り乱した声を上げた。
「渡したのか、二百万を……!?」
「まさか。そんな大金がぽんと用意できるわけないじゃありませんか。ひとまず百万を渡して」
「渡したのか……」
志遠さんは沈痛な面持ちで額に手をあてる。
「おかしいだろう、いきなり大金を渡せって」
「住居代はすべて彼が持つと言ってくれてますし、私だって働いてるんですから、少しくらいは負担しないと」
そうじゃなくて……と志遠さんは腑に落ちない顔でうなだれる。
「それ以前に、本当に大丈夫なのかその男は。双方のご両親に挨拶には行ったのか?」
「いえ、これからです。それに、私の方はもう両親ともに他界してますし」
「……格好のカモじゃないか」
志遠さんはなにかを言いかけたが、ごくんとのみこみビールとともに喉の奥へ流しこんだ。
「ちなみに、出会ってから百万渡すまで、何カ月だ?」
「二カ月くらいです」
「What a pillock……」