迷彩服の恋人
「……あった!土岐さん、気が向いたらこの作品見て下さい。〝高速道路で車を走らせる話〟で、車種も結構いろいろ出てるので。…私の推しは、〝ポルシェ乗りの役〟です!」

「あっ。これ、原作マンガ読もうと思ってて…時間無くて読んでないやつだ。そうか、実写映画があったんですね!時間作って観てみます!」

そんな会話をしているところに……。

「お2人さん、どう?…20分ぐらい経つけど、戻ってこないから…覗きにきた。」

「えっ!?そんなに経ってたんですか!?結花先輩。」と彼女に聞き返すと、「そうよ。」と返ってくる。

「やだ、土岐くん…教えてあげてよ、時間ぐらい。よっぽど居心地が良かったのね。…もうこの際、連絡先交換しちゃえばいいんじゃない?」

「えっ!?」

結花先輩、なんて爆弾発言を…!やめて下さいよー!
そう思って戸惑いまくってる私達2人に、先輩は「2人とも戸惑いすぎよ。」と言って問答無用でスマホを出させた。

「あのっ!私は…土岐さんともっとお話したいです!良かったら、さっき話した映画の感想を聞かせて下さい。」

お願い…!土岐さん…!

「望月さん……。はい、お伝えしますね。…ただ、毎日のやり取りは難しい場合もありますけど…。」

「大丈夫です、お仕事の都合ですから。ゆっくり待ってます。それから、お話も聞きましたし…こちらからご連絡するのも17時以降にしますね。」

「こちらの仕事のことまで…。ありがとうございます。」

土岐さんは一瞬ハッとした顔をした後、表情を崩して笑った。

「土岐くん――。」

「クスッ。分かりました。どちらも肝に銘じます。」

『肝に銘じます』?
先輩、土岐さんに何を言ったんですか…。耳打ちまでして。



こうして私達は再び店内へ戻り、お開きの時間まで当たり障りない会話をしながら過ごした。
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