アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「お疲れっす!鳳雅さん!
揚羽様と、あ!四葉ちゃん!」

鳳の仲間達の溜まり場である、地下にあるバー。
中に入ると、仲間の一人が近寄ってきた。

鷹寅は鳳雅を通じ頻繁に会っていて、可愛らしい顔をしているので大丈夫だが、鷹寅以外の仲間は怖くてなかなか近寄れない四葉。
揚羽の背中に隠れた。

「四葉に近寄るな」
「あ、す、すんません!」
揚羽の一喝で、後退る仲間。

四葉は自分自身に必死に言い聞かせていた。

この人達は、鳳雅の仲間。
鳳雅や鷹寅は、こんなにも優しい。
だから、二人と同じだと━━━━━━

ソファに座る。
揚羽と鳳雅が、四葉を間に挟み座った。
「四葉ちゃん、何飲む?
酒は苦手なんだよね?
ジュースでいい?」
鷹寅が微笑み話しかけてくる。

「うん」
「揚羽様はどうしますか?」
「四葉と同じで構わない」
「はぁーい!」

鳳雅が煙草を取り出し、吸い出した。

「鳳雅」
「ん?」
「四葉の前でやめろ」

「あ?何言ってんの?
揚羽だって吸うだろ?はい、一本」

「だから!四葉の前で吸うなと言ってる」

「あ、揚羽くん、大丈夫だよ!」
四葉は場を収めようと、揚羽に微笑んだ。

「ダメだ。四葉は煙草が苦手なんだから、吸わない選択肢しかない」
「大丈夫。少しずつ慣れていかないと……」

「僕と結婚するために?」

「え?あ、うん…
今だって、その為の第一歩だし」

「こんなに、身体が震えてるのに?」
揚羽がゆっくり背中をさする。

「でも、揚羽くんの傍にいたいから」

「揚羽、四葉が必死に覚悟を決めようとしてるんだから見守れよ!」
そう言って、もう一度煙草を箱から一本出した鳳雅。
揚羽に差し出した。

揚羽はため息をつき、一本取り咥えた。
鳳雅が火をつける。

揚羽が四葉に煙がかからないように、反対側に煙を吐いた。

初めて見る、揚羽の煙草を吸う姿。
思わず四葉は、見惚れていた。

「ん?四葉?」
「……/////」
「四葉、どうしたんだよ?」

鳳雅も首をかしげてきて、両側から二人が顔を覗き込んできた。
イケメンと言う言葉では表現出来ない程の美しさを持つ、二人。

「う、ううん!
わ、私!お手洗い!!」
そう言って、逃げるように立ち上がりトイレへ向かった。

「カッコ良かった…」
揚羽に日に日に惚れていく。

例え揚羽が、恐ろしい人間だったとしても━━━━━

トイレから出ると、仲間の一人・文人(ふみひと)とぶつかる。
「キャッ!!あ、ご、ごめんなさい!!」
「こっちこそ、わりぃ………あ!四葉ちゃんだぁー!間近で見ても、チョー可愛い~」

そう言って文人は、顔をグッと近づけてきた。
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