アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
夜が更けて、四葉が眠りについた。

揚羽はその可愛らしい寝顔を、ジッと見つめていた。
帰らなければ…と思うが、なかなか放れられない。

このまま、本当に時が止まればいいとさえ思う。

バカみたいな考えだ。
こんな非現実的なこと━━━━

なのに、本気で思う。

時間が止まればいい。
四葉と二人だけの世界になればいい。と……


「ほんっと、馬鹿げてる……」


あと30分だけ……

そう思い、揚羽は四葉を抱き締めた。
四葉の甘い匂いが、揚羽を癒しと睡眠に誘う。

(ヤバい……寝て…しまい…そ…)

そのまま、揚羽も眠りについたのだった。



「━━━━━様。四葉様!朝ですよ!?」
ドア越しにノックの音が響き渡り、原内の声が寝ぼけた揚羽の耳に入ってきた。

「………
はっ━━━━━!!!?」
ガバッと起き上がる、揚羽。

「四葉、四葉!四葉!起きて!!」
「ん…ん、揚羽く…おはよ…」

まだ四葉は寝ぼけていて、揚羽の膝にすり寄り頭をのせてきた。

か、可愛い……
このまま、押し倒してしまいたい━━━━━

でも揚羽は、頭を横に振り四葉に声をかける。
「四葉!朝だよ!」
「ん……うん…
━━━━━━ん?はっ!!?揚羽くん!?」

「ごめん、夜中の内に帰るつもりが寝ちゃった」

「どうしよう……」
「さっきから、原内が何度もノックしてる!」
「そうだよね。私、昨日から部屋に籠ってるから。
とにかく、私が原内さんの気を引くから、またベランダから出ていってくれる?」

「わかった。四葉、また大学でね」
揚羽は四葉の口唇に軽くキスをして窓に向かった。

四葉はそんな揚羽を追いかけ、後ろから抱きついた。
「四葉?」
「揚羽くん、昨日は本当にありがとう!
私のワガママ聞いてくれて!
凄く嬉しかったよ!
ほんとに、ロ◯オみたいだった!
ありがとう!」

振り返る揚羽を見上げ、満面の笑みで言った。

「うん」
揚羽は四葉の頭を撫でて、今度こそベランダから出ていった。


揚羽が自宅に着くと、鳳雅がいた。
「おかえり」
「ただいま」

「朝帰りなんて、揚羽初めてじゃね?
どこ行ってたの?」

「四葉に会ってた」

「そっか。
てか、それ以外考えられないよな?
揚羽の朝帰り……………
……って━━━━━━━え!!!?四葉!!?」

「うん。さっきまで一緒にいたんだ」

「どうやって中入った!!?
揚羽は、敷地内に入ることさえ許されないじゃん!」
「壁から」

「は?猿かよ!!?」
< 23 / 46 >

この作品をシェア

pagetop