アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「おかえり!
もう買ったんだけど、いい?
これで!」

ショップに戻ると、鳳雅がアンクレットを見せながら微笑み待っていた。

「うん…」
「つけるから、そこ座って」
さりげなく、四葉の手を握り近くの椅子に誘導した。

そして優しく四葉の左足を持ち上げ、自分の膝に乗せて、アンクレットをつけた。

「ありが…とう……」

見上げて四葉に微笑んだ鳳雅は、今度は四葉を包み込んだ。
「え……ちょっ…鳳雅くん!」
慌てて、押し返す四葉。

「動くなよ!ネックレス…つけてあげてんだから」
ネックレスをつけた鳳雅は、四葉に向き直りネックレスをなぞった。

「アンクレット」
「え?」
「絶対、外すなよ」
「え?う、うん…」

「外したら、これ……もう、直せないように壊すからな」

「…………わかった」
凄く見つめくる鳳雅に、四葉はビクッとして頷いたのだった。


「四葉!!」
ショップを出ると、ちょうど揚羽が来て抱き締められた。

「揚羽くん!」
「あ、ネックレス…直ったんだね!」

先程の鳳雅と同じようにネックレスに触れた、揚羽。
「うん…」
「フフ…やっぱ、似合ってる」

「うん、ありがとう」

「四葉?どうした?」
「え?」
「また、元気がない」
四葉の頬に触れ、ゆっくり撫でる揚羽。

「あの……」
「ん?」
鳳雅にアンクレットをプレゼントされたことを伝えようとするが、揚羽が傷つくのではと言いあぐねていた。

「四葉?」
「ううん…何も…ないよ…」

「…………鳳雅に、何された?」

「え…!?揚羽くん?」
「今まで鳳雅と一緒にいたんだから、そうとしか考えられない。何された?言って?」

「………」
「……アンクレット」
「は?」
言いあぐねる四葉に代わり、鳳雅が揚羽に言った。

「俺が四葉にプレゼントした」

「そう…なの……?」
揚羽の瞳が切なく揺れ、四葉は見ていられなくて目をそらした。

「なんで…受け取ったんだ?」
「それは……」

「俺達は“婚約者”なんだから、当たり前だろ?」

「鳳雅」
「ん?」
「お前…」

「アンクレットくらい、いいじゃん!
“指輪”じゃないだけ、良かったと思え」
「………」

「揚羽くん…」
「……四葉。見せて?」
「え?」
「鳳雅が贈ったアンクレット」

「う、うん…」
足を少し前に出した。

揚羽は四葉の足元に跪き、アンクレットに触れた。

「へぇー、これ…さ…」
「え?揚羽くん?」

「………ううん。
鳳雅…これ、僕に喧嘩売ってるよね?」
立ち上がり、鳳雅を見据え睨み付けた揚羽だった。
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