アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「おはよ、四葉」
「四葉、おはよう!」

週末の休日。
鳳雅が、四葉を迎えにきた。

「おはようございます。
琥蝶おじ様、鳳雅くん」
「せっかくなんだから、もっと楽しそうにして?」

「うん…そうだよね……!」

琥蝶から誘われ、四葉は鳳雅家族と旅行に行こうとしていた。

「琥蝶、鳳雅。頼むな」
「はい」
「四門や葉月も、来ればいいのに。
弥子(やこ)(鳳雅の母親)も喜ぶし」

「悪いな、仕事がたまってて…
葉月も、予定があるみたいでな。
でも、残念がってたぞ。
弥子と久しぶりに会いたかったって」

「そっか。
………じゃあ、四葉。行こうか?」

「はい。
お父様、行って参ります」
「ん。楽しんでおいで」


「四葉ちゃん、おはよう!
はぁー、ため息つく程に可愛い……」
早瀬の屋敷で待っていた弥子が、四葉を抱き締めた。

「おば様、おはようございます」

「ねぇ、いつ鳳雅との結婚を決めてくれるのー?
早く、四葉ちゃんと親子デートしたいのにぃー」
「あ、ごめんなさい……まだ、私…」

「揚羽ね」
「あ、ごめんなさい……!」

「弥子!やめろよ!からかうの」

「だってぇー、可愛いんだもん!
フフ…いいのよ。
鳳雅を振っても」
「え?」

「俺と弥子は、鳳雅と四葉が決めたことに従うから」
「おじ様…」

「四門は、融通が利かないからなぁー」
「でも、おじ様も都筑のお祖父様と縁を切ってるでしょ?
お父様と、同意見なんじゃ……」

「俺は、典型的に親父が嫌いだから。
いまだに、親父がお袋を殺したと思ってる。
恵実(めぐみ)(揚羽の母親)も、結局…都筑に殺されたようなもんだしな。
だから、俺達も四葉は鳳雅と一緒になってほしいと思ってる。
でも四葉が揚羽の傍にいたいってなら、反対できない」

「揚羽が悪いんじゃないしね。
都筑組が、揚羽を縛りつけてるようなものだわ」

「おじ様とおば様は、お優しいですね。
お父様やお母様も言ってました。
琥蝶は優しいって。
そうゆうところ、鳳雅くんも似てるって」


それから四人は、車に乗り込み旅館に向かった。
旅館に着き、鳳雅と四葉は近くをゆっくり散歩していた。
「風が気持ちいいね……!」
「あぁ」

四葉の髪の毛が、暖かい風に揺れる。
四葉の甘い匂いが漂って、鳳雅は心臓がトクンと鳴った。

“オヤジが亡くなったら、都筑が大きく変わる。
揚羽。覚悟をしておけ!”

毅蝶から聞かされた、蝶矢の余命。
その時に、言われた言葉だ。

「四葉」
「ん?」

「“今なら”俺の嫁さんになってくれるんだよな?」
「え?」

「もし、今……
揚羽が都筑組に入ることになったら………」

「鳳雅くん…?」
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