私の騎士様
「こ、こんなところから飛び降りるなんて死んでしまうわ！」

「大丈夫ですよ、お嬢様」

恐怖が込み上げ、恵の首に伶奈は抱き付く。そんな伶奈を安心させるように恵は微笑み、キスを一つ落とす。

「お嬢様のことは、この命に変えてもお守り致します」

そう言い、恵は足に力を入れて伶奈を抱えたまま窓から飛び降りる。落ちていく感覚に伶奈は悲鳴を上げたが、恵は伶奈を離すことはなかった。

バキバキと音が響く。庭にあった樹木の上に二人は落下したため、怪我をすることはなかった。だが、失ったものの方が大きい。

「お父様、お母様……」

伶奈が屋敷の方を見れば、屋敷は炎に包まれて燃え盛っている。いつの間にか駆け付けてくれた消防士が消火活動をしているが、火の勢いの方が強く追いつかない。

「これじゃあ、中に残された人はもう……」

「ああ。仮に助かったとしても、全身大火傷だろうな」

警察や救急隊の人の言葉が伶奈の耳に入り、心を抉る。無意識に伶奈は恵の手を握っていた。

「お願い、離れないで……」

「承知しております、お嬢様……」

火事を起こした男はニヤリと笑い、震える彼女を抱き締める。その胸に喜びを感じながら……。
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