魔法の手に包まれて
4.市民ギャラリー
 市民ギャラリーで陶芸展が開かれるという。千夏は、その陶芸展に一緒に行こうと彰良から誘われていた。

 あの五人の園児たちは、先日、無事に卒園を迎えた。卒園式に卒園証書とともに卒園製作で作ったお皿やカップを千夏が一人一人に手渡した。子供たちはすぐにそれを広げて、友達同士で見せあっていた。晴れやかな、とてもいい笑顔だった。それを見守る保護者の顔も、とても幸せな表情だった。
 さらに無事に卒園生を送り出した千夏を、園長と杏奈も褒めてくれた。去年の卒園式を見ていたらどうなるかとハラハラしたけれど、子供たちにとって思い出に残る素晴らしい式だったと。
 四月以降の人事はわからないけれど、もしかしたらこのような小規模ではなく、人学年、何クラスもあるような幼稚園に配属されるかもしれない、と。

「悩んだ時はいつでも相談にのるわよ」と杏奈が姉御肌を利かせていた。
 彰良が言っていた通りだった。園長や杏奈の気持ちに気付かず、そこから逃げ出そうとしていたことに。

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