妄想腐女子の恋愛事情  倉橋琴音と影山海里
琴音は、ふぅと息を吐いた。

「生徒さんに見つかると、
ヤバいのでダメです。
18禁だから」

景山先生は、
すぐに封書や書類を、そのへんに置く事を、琴音はわかっている。

それに、ここは未成年者の
教育現場ではないか。

「ああ、そうだな、
ガキどもに見つかると、
キャンキャンうるさいしな。

上の階のポストに、入れておいてもらおうか。

返却は、君に直接手渡しをする。
それでどうだ?」

琴音は悩んでいた。
景山海里は、香山教授と激似で、
つまり、
琴音の推しメンタイプなのだ。

頼まれると嫌とは言えない。
弁当の副収入もありがたいし。

「わかりました。
何か、みつくろっておきます」

「楽しみにしている」

景山先生の目じりが下がり、
優し気な表情で、琴音を見た。

琴音の脳内ではBLではない、
TLが出てきそうになったので、

あわててゴミ箱にあったレジ袋に、本をつっこんだ。

琴音は、BL本の入ったレジ袋を、胸に抱いて
(絶対に落とさないように)、
ビルから出た。

冬の終わりの月が、
春を迎えるように、朧(おぼろ)に、光を放つように見える。

先ほどの缶チューハイで、
頬が赤い。

景山海里との秘密の共有は・・
ときめく気分がした。

でも、BL本を、自分の推しメンに貸すってどうなのか・・・

琴音は、首を横に振ってから、
大きくため息を吐いた。
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