魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
だが……できるなら、名前を呼ばれてみたいと思った。

この美しい声に「夜明」と呼ばれたら、どれだけ気分がいいだろう。

想像するだけで、これまで感じたことのなかった感情が胸の奥底から込み上げてくる。

なんだ、これは……。



「おふたりは、お昼ご飯はもう食べましたか?」



改まって聞いてくる鈴蘭を見ると、視線がぶつかった。

といっても、鈴蘭のほうはフードで俺の顔は見えていないだろう。俺は透視能力があるため、鈴蘭の綺麗な顔がはっきりと見えていた。

大きな瞳は、やはり一点の陰りもなく、美しい。

その瞳に直接見つめられ、一瞬呼吸が止まった。



「……いや、あとで食べる」



思わず視線を逸らしてしまう。

危なかった……魂を抜かれるかと思った。

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