隠された彼の素顔

 促されたまま乗り込んだ車。自分が座る席の後ろに誰かいたのが、チラリと見えた。フードを深く被った人。

 私は後ろを振り向けずに、姿勢を正したたま動けなかった。

 ほとんど外が見えない状態で、ハザードランプの音がして車が停まる。

 後ろの人が動き出した気配がして、肩を揺らす。その人は車を降りて行った。

 ぼんやりしていると運転手の人に「あんたもここで降りてください」と声をかけられ、おそるおそる外に出た。

 目の前には、見覚えがあるマンション。エントランスに、フードを深く被っている人がこちらを向いて立っている。

 私は足がもつれそうになりながら、その人の元に急いだ。

 ドッドッドと早い鼓動。

 部屋に入っても、声を発せられない。

 フードの人は奥の部屋に消え、私はその場に座り込みたい気分だった。だってここは。

「なっ」

 改めて現れた彼を見て絶句する。彼はレッドの姿で現れた。
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