メルティ・ナイト
校舎に入ってから校長室までの行き方を先日教えてもらったのに、驚きと戸惑いのあまりど忘れしてしまう。
さらに生徒たちがたむろっているこの廊下を、平然と通れるメンタルは持ち合わせていないわけで。
すっかりここに来た目的を忘れて、早く家に帰ろうと、なんとか後ずさりをした、そのとき。
「あれ、女じゃーん」
「ひっ……」
呑気な声が聞こえてきて、ビクッと肩があがる。
と同時に、予測していなかった声に驚きすぎて、さきほど身を潜めていた柱に、おでこをゴツンとぶつけた。
「い、いったあい……っ」
ジンジンと痛むおでこに手を当てる。
勢いよくぶつかったせいでかなり食らってしまう。
「うわ、いまのはぜったい痛いわ。大丈夫そー?」
尚も飄々とした声にハッとする。
そうだ、この人は誰だ。
おでこを抑えながらチラッと声の主を確認する。