身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
5、止まらぬ涙


 灰色の空からは、ちらちらと細かな雪が舞い落ちてきている。

 今日は一段と冷えるなと思いながら、掛け布団を首まで引き上げた。

 季節は一年の締めくくりにあたる師走に入った。

 退職し、田舎に帰って三か月。私はもうすぐ妊娠六か月を迎える。

 田舎に戻ってきたあたりから急に悪阻がひどくなり、一日に何度もお手洗いに駆け込むようになった。

 こっちに帰ってきてきょんちゃんが連れていってくれた産婦人科の先生は、双子を妊娠すると悪阻もひどく出やすいと教えてくれた。

 日によっては調子がいい日もあり、そんな日は無理のない程度におばあちゃんの店も手伝っている。

 だけど今日はだめな日らしく、おばあちゃんが休んでいなさいと言ってくれた。

 妊婦生活もあっという間に後半に突入。

 五か月あたりからはお腹が出ているのも目立ってきて、ずいぶん妊婦らしい体型になってきている。

 最近はお腹の中から赤ちゃんが動いているのも感じられるようになってきた。

 ぽこぽこと押したり蹴ったり、お腹がぶるぶると震える感覚もあったりと、赤ちゃんが体の中で成長していることを実感している。

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