身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
目を見開き、思わず口に手を当てていた。
じわっと自然に涙が浮かび、視界がぼやける。
なんで……なんでそんなことを……?
家の前に車が停まったのを目撃したところから、夢を見ているのではないだろうか。そう思わざるを得ない。
「交際って……」
おばあちゃんのどこか驚いたような声が聞こえ、目尻を濡らした涙を拭う。
「お願いします」
ここまで遠路はるばるやって来て、水瀬先生はなぜそんなお願いをしているのか全くよくわからない。
あの可愛らしい婚約者は? もう結婚するんじゃないの?
「お引き取りください」
おばあちゃんの声が聞こえ、思わず戸口に手をかけ顔を出しかける。
ぴんと張り詰めた緊張感が伝わってきて、気配を消そうとまた自然と息を止めていた。
「どうぞ、お引き取りください」
おばあちゃんはもう一度はっきりと同じ言葉を繰り返す。