身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
9、家族を始めよう



 季節は梅雨。七月に入った。

 今年の梅雨入りは遅く、平年よりも一週間遅れたという。

 例年、梅雨明けは七月半ばが平均というが、今年は八月頭に梅雨明けになると天気予報で伝えていた。

 そんな梅雨の真っ只中、今日はどんよりしながらも雨のない空が広がる。

 まるで今日の引っ越しのために雨を我慢してくれているようで、空に向かって手を合わせてしまった。

 住まいが決まってから、事前に送れる季節違いの衣類などは先に数度に分けて宅急便で送らせてもらった。

 当日の今日はそこまで大きな荷物もなく、引っ越し業者に頼まなくても事足りた。


「パパきた!」


 今か今かと漣さんの迎えを窓を開けて待っていた月は、到着した車に歓喜の声を上げる。

 一目散に靴を履いて飛び出していく背中に「月、走ったら危ないよ!」と声をかけた。


「あー! うたもー! まってー」


あっという間に駆けていったふたりを慌てて追うと、漣さんがちょうど車から降りてきたところ。

「パパー!」の声をハモらせ、ふたりが漣さんに飛び込んでいく。

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