身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 私はそのまま水瀬総合病院に搬送された。

 ひどい貧血のため、漣さんは即検査をすると私に説明した。

 貧血の原因がなんなのか。貧血の裏に別の疾患が潜んでいる場合があることもあるというのだ。

 それが癌によって貧血が引き起こされる場合もあると聞き、素直に即検査に応じた。

 検査後、ベッドに戻り横になっていたら、いつの間にか眠ってしまったようだ。

 カーテンのかかる窓の外は、オレンジ色で西日が落ちかけているように見える。

 ぼんやりしていると、病室のドアがノックされた。


「気分はどうだ?」


 漣さんの顔が見えて、ホッと安堵する。

 スクラブ白衣の姿でひとり病室に入ってきた漣さんは、私の横になるベッドの横の椅子に腰を下ろした。


「はい。大丈夫です。ごめんなさい、こんなことになって大騒ぎに……」

「何も気にすることはない」

「でも。月と詩は、お義母様が?」

「ああ。あとで迎えに行くと言ってある」


 私の「そうですか」を最後に、無音の病室には沈黙が落ちる。

 検査の結果はもう出たのだろうか。

 この沈黙、もしかしたら何か重大な病でも見つかってしまったのだろうか。

 黙ったままの漣さんがベッドの上で点滴に繋がる私の手を取る。

 じっと真剣な眼差しで顔を見つめられ、増大する不安に鼓動が早鐘を打っていた。

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