身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む

──Side Ren




 交差点を曲がる間際、ルームミラーで後方を確認する。

 送り届けたアパートの前で、まだこちらを見届けてくれている彼女の姿が小さく見えた。

 スカートの前で両手を組み合わせ、曲がっていくこの車に向かって頭を下げる。

 最後にその姿を目に焼き付け、名残惜しい気持ちを残したままハンドルを切った。


 ちょっと、早まっただろうか。


 目を見開き、紅潮させた顔が鮮明に蘇る。

 仕事の一環などと約束を取りつけておいて、誰にでもこうして声をかけていると誤解されては困ると気づき焦った。

 君だから声を掛けた。君にもっと近づきたい。

 そんな想いが先行して、当初の予定よりも迫ってしまった。

 次も期待していいと返事をくれた彼女だけど、もしかしたら仕方なく返した返事だったのかもしれない。

 そんな気がかりを残す別れ方になってしまったのは自分が悪いわけだが……。

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