身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
盛り上がる看護師を横目にリネン室に向かいかけたとき、向こうからナーシングカートを押してきた遼くんに鉢合わせた。
「あ、ちょうどよかった。三〇五の木下さん、手に使ってる軟膏がなくなったから欲しいって」
「木下さん。了解、今からちょうど回るから渡しとく」
そう言った遼くんは、思い出したように「そうだ」と付け加える。
「佐田、今日のは出席するんだろ?」
今晩の創立記念パーティーのことだ。
「あー、うん。出席予定だよ」
「そうか。飲み会には来ない奴だから、今晩のも怪しいと思ってた」
「仕事の延長みたいな席だし、飲み会とは別でしょ」
「まあな」
私の出席を確認した遼くんはカートを押して通りすがっていく。
「せいぜい先輩たちに飲まされすぎないように気をつけろよ」
そんな冗談を言いながら足早に立ち去っていった。