身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む



 その日の終業時刻後。

 仕事を終えたスタッフは我先にと仕事を上がり、おのおの会場となる老舗ホテルを目指す。

 私がホテルに到着したのはちょうど式典の始まる時刻で、ホテル内に用意された更衣室でパーティー用に持参してきたよそ行きのワンピースに着替えを済ませた。

 前に結婚式の二次会に呼んでもらったときに一度だけ着た、黒の膝丈ワンピース。

 デコルテと袖部分がレース生地になっていて、こういう場でないとあまり着る機会のない透け感もあるデザインだ。

 仕事中はしないマスカラを睫毛に塗り、たまにしか使わないブラウンのラメ入りアイシャドウを瞼に薄く載せる。

 髪は仕事中にまとめているから下ろすと変な癖もついているし、ヘアクリップをオシャレなものに付け替えるだけにした。

 クロークに荷物を預け、三階にある会場へと向かう。

 エレベーターでフロアに出ると、そこはすでにパーティーに訪れた多くの人で賑わっていた。

 関係者といえ見知らぬ人も多くいるのを見ると、改めて自分の働いている病院が大規模だということを実感する。

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