身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 水瀬先生を相手に、私なんかがそんな気を回すなんておこがましすぎる。

 そんな自分に腹が立ったし、最低だと嫌気が差した。

 だけど、会えばあの日の帰りのように、離れることを躊躇する自分が勝ってしまう気がする。それが怖い。

 まだ、好きになりかけていただけ。

 どっぷり後戻りできないくらい好きになったわけではない。

 あの日から、そう自分に暗示をかける日々を送っている。

 水瀬先生のことは、いい思い出だけ記憶に残して忘れる。

 連絡も私からはしない。

 今回のように連絡をもらっても、必要以上に話を広げない。

 そうすれば、水瀬先生も私のことは忘れていく。

 自然に消滅していけば、そこまで傷つかないで済むはず。


「ねぇ、誰か生理ナプキン持ってない? いきなり来ちゃってたんだよね」


 そばからそんな声が聞こえ、無意識に「持ってます」と言っていた。


「うそ、ある? さすが佐田! ひとつ恵んでもらえると助かるー」

「いいですよ。予備で持ち歩いてるのがあるので。今取ってきますね」

< 88 / 246 >

この作品をシェア

pagetop