モナムール
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【廻side】
「あれ?ねぇマスター、あっちのお姉さん寝ちゃってるよ?いいの?」
「え?……あ、本当ですね」
女性グループの相手をしている間、気が付けば中野さんはテーブルに突っ伏すように眠ってしまっていた。
バーカウンターから出て中野さんの元へ向かい、少し肩をゆすってみたもののぐっすり寝ていて起きる気配は無い。
ほんのりとピンク色に染まった頰がいつもよりも幼さを残して、とても可愛らしくて今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。
「マスター、お姉さん大丈夫そう?」
カウンター側からの声に正気に戻り、店の裏からブランケットを持ってきてその華奢な背中にそっとかけた。
「少しお疲れのようなのでこのまま閉店まで寝かせておきます」
「マスター優しいねぇ」
頬杖をつきながら別の話題に映った彼女たちの話を半分聞き流す。
そんなことよりも今の俺の頭の中は、そこで眠っている中野さんのことでいっぱいだった。
数日ぶりの来店だった。それもこんな遅い時間だったから驚いた。
入ってきた時にすでに頰が上気していたのと今眠っているところを見るに、もしかしたらどこかで飲んできた帰りなのかもしれない。
女性たちが名残惜しそうに帰っていく姿を見送った俺は、閉店準備を進めつつその寝姿を見つめた。