こいろり!
「おらっ、撫でたぞ!」
「次は、ぎゅーーーってして!ドリームランドの時みたいに、上着にの中に入れてギュッてしてよ!」
「はぁぁ!?」
「寒いの、優しく温めて!今すぐよ!」
「なんで俺が……」
舌打ちしたと同時に、華花が俺の胸に飛び込んできた。
ふざけんなよ、このワガママお嬢様が。
くそっ。鍋やったのに、なんでいい匂いがするんだよ。
華花の両手がぎゅっと背中に回されて、小さな頭が胸んとこにぐりぐり押し付けられる。
「は、離せって!」
「……いやよ」
「あー……もう、ったく、しょうがねーなぁ。これで周と美魔女に言うんじゃねーぞ?」
「温かいわ。泰良の心臓の音がする」
「まぁ、心臓くらい動いてんだろ?」
「私、泰良の匂い好きだわ」
「は?」
「ドキドキするけど、とても安心するわ」
華花が顔を上げて上目遣いで俺に視線を向けるから頭が真っ白になる。
俺、何で悩んでたんだっけ?どうでもよくね?
ぎこちなく動いた右手が、華花の頬に触れたその時──。
「華花お嬢様!!一体、何をやっているんですか……!?」
車の窓から青ざめた周が顔を出した。