儚く甘い

毎年、先にみわと隆文、裕介は墓地の隣にある公園のベンチに座り母を待つ。

子どもたちが離れた瞬間、母は毎年泣き始める。

父が亡くなってから、子供たちのためにもと泣く暇もなく過ごしてきた母。
父のことで涙を流すのは、いつの日からか、命日だけになった。

失った愛する人への涙と、娘を連れて行かないで、どうか守ってという涙。
でも、もしも娘の運命を変えられずそっちの世界に連れて行くのならば、あの子が迷わないようにそばに居てほしいと願う涙。

まるで母の涙を励まし、答えるように咲いている早咲きの桜に、母は意味を持っているようにしか思えない。

しばらく父と一年に一度の会話をしたあと、母が子供たちの待つベンチに向かう。