儚く甘い
~♪
『はい』
数回コールしただけで電話にでた達哉。
「今日あったいいことと、つらかったこと、聞いてほしくて」
素直なみわの言葉に、達哉は自分の部屋の椅子に座る。
『どんなこと』
「いいことは、今日はお父さんの命日でお墓に行ったの。毎年早咲きの桜が今年も咲いててきれいだった。風もあったかくて、優しくて、私はあんまりお父さんの記憶ないんだけど、思いだせるような気がした。」
『そっか』
低く穏やかな声で達哉が話を聞いてくれている。
「お兄ちゃんがすごくうれしい言葉を言ってくれたの。特に今日の私には意味があった。」
『そっか』
そっけない返事でも、ちゃんと話を聞いてくれていることが伝わり、みわは話を続ける。
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