儚く甘い
「もう、こうして達哉に電話するの、やめようかなって」
しばらくして絞り出したみわの言葉に達哉が少し声音を変える。
「だって、私、死んじゃうよ?」
死にゆく人が誰かを思い出を作っても、悲しみを増やすだけだ。
いなくなるとわかっている人が、誰かのテリトリーに入れば、その分だけ隙間があいて寂しくさせるだけだ。

『みんな、いつかはな』
その言葉の意味をみわは知らない。
でも、はじめて話をした日から思っていた。

達哉が生きることに希望を持てていないのではないかと。
何かに絶望しているのではないかと。

どこかに儚さを秘めていることにみわは気づいていた。
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