儚く甘い
みわを食堂で見つけた瞬間、少しだけ体が震えた。
それはみわを見つけた安堵の震えではなく、あの日、救えなかった、間に合わなかった命を思い出した瞬間の震えだった。

『バイバイ』
今でも頭の中で何度も聞こえるその声。
その声は亡くなった兄の恋人、長田葉月の声。

兄が亡くなってから、自分に兄の面影を見つけて生きる希望にしようとしていた彼女を、達哉は受け入れることができなかった。

嫌いではなかった。
むしろ、好きだった。

幼いころから家が近所で仲が良かった兄と葉月と自分。
兄が葉月が好きだと知った瞬間から自分の気持ちに蓋をして、気づかないようにしていた。
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