儚く甘い
「寒くないか?」
「うん」
達哉は車いすの横にしゃがみ、みわの頬を撫でる。

夕日に照らされたみわの顔。

その愛らしい表情に、思わず微笑む。

「俺、教師になる。」
「え?」
「これは俺の夢なんだ」
「・・・」
兄と亡くなった葉月の想いを継いで、教師になろうとしていた達哉。

2人の夢をかなえることだけを目標にして生きて来た。

その夢の先に何があるかなんて考えたことはなく、夢の世界に立ったら何が見えるかを見たかっただけだった。
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