儚く甘い
いつも達哉が吸っている煙草の香りがする上着。

「みわ」
少し乱暴に停まった兄の車からは、隆文と裕介、母が降りてきて、みわのもとに駆け寄ってくる。
母がみわの体を抱きしめる。

「ごめんね」
母に抱き着きながら言うみわの言葉に母は何も言わないまま首を横に振る。

「デザートなしだな」
と雰囲気をなごませようという裕介の言葉に隆文も「そうだな」と同調する。
「いやだー」
無邪気に笑うみわに、家族はこれ以上何も聞かなかった。
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