余命宣告された君と恋をした

1

「よろしくね」

そう君が話しかけてくれたのが出会いだった。

君と話すのがとても楽しかった。

でも……。

幸せの終わりは近づいていた。






「おはよー!」

みんながそんなことを言っている中、僕、加賀春樹(かがはるき)は静かに読書をしていた。

僕は人と関わるのが好きじゃない。

だって、いじめられたことがあるから。

だから誰にも興味を持てない。

それに地味な恰好をしているから誰も話しかけてこない。

さっきまでは。

チャイムが鳴り、先生が入ってくる。

それと同時に見かけない生徒も入ってきた。

「初めまして、一ノ瀬華怜(いちのせかれん)です」

そんな転校生の声にみんなが騒ぐ。

まぁ、無理もなかった。

その転校生は美人だった。

顔が整っている。

そのことに興奮しているのか男子も女子もうるさい。

はぁ。

そんなため息をつきながら、外を眺める。

「よろしくね」

気が付くと何故か転校生が隣にいた。

男子からの視線がすごい。

「……よろしく」

ごく普通な返事をして、またすぐに外を向いた。

その転校生からの視線に気が付かずに。



「一ノ瀬さんの趣味って何?」

そんな女子達の声が聞こえる。

隣から。

女子の声は甲高いものが多いから好きではない。

しょうがない。

他のところで読書をするか。

そう席を立った時。

「はー君!」

一ノ瀬に声をかけられた。

周りの視線が一気に来る。

僕のこと、だよな。

「……何」

「私の事、覚えてない?」

少女漫画みたいなことを言われた。

そんなことを言われても全く知らない。

「知らない」

そう言って教室をでた。

休憩が終わり、教室に戻るとみんなの目線が変わっていた。

一ノ瀬を見ると、目元が腫れている。

……泣かせたか。

席に着くと一ノ瀬が話しかけてきた。

「ごめんね、変なこと言って」

弱々しく笑う一ノ瀬を見ると何故か胸が痛くなった。

わからないけど謝っておいた方がいい気がする。

「いや、こっちこそ泣かせたならごめん」

僕が謝ると一ノ瀬は目を丸くする。

すると急に微笑んだ。

「なにか変な事言った?僕」

「ううん、はー君は変わらないなって思って」

たしかに昔は謝る癖があった。

でもなぜ一ノ瀬が知ってる?

それに……。

「そのさ」

はー君って呼び方、何?

そう聞こうとしたけど出てこなかった。

何か忘れてる気がする。

大切なことを。

一ノ瀬は首を傾げている。

「ううん、なんでもない」

思い出してやる。

絶対に。
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