余命宣告された君と恋をした

2

「行ってきます」

いつも通りに学校を出る。

ただひとつだけ違うことといえば。

「はー君、行こ!」

一ノ瀬がいるっていうこと。



「はー君って勉強得意?」

一ノ瀬がそう聞いてくる。

最近一ノ瀬はよく話しかけてくるようになった。

多分一ノ瀬が知ってる僕と変わってないって思ったんだろう。

だけど、僕は何も思い出せていない。

それが申し訳ない。

「ううん、得意じゃないよ」

僕がそう言うと、一ノ瀬は首を振った。

「いやいや!だって中間テスト学年1位だったでしょ?」

そう言われ、言葉に詰まる。

なんで知ってるんだ……。

一ノ瀬が言った通り、中間テストで学年1位をとった。

理由は勉強が好きだから。

だから知識が得られる読書も好きだし。

でもそれを言って引かれないだろうか。

それが怖くて一度も人に言ってこなかった。

黙っている僕に一ノ瀬は何も質問をせず、違う話題へと変えてくれた。

一ノ瀬と話すのは心地がいい。

いつか色々話せたらいいな、とも思う。

そんなことを考えていると一ノ瀬が急に僕の目の前に来て言った。

「……ってことでいい?はー君」

「え、あ、うん」

思わず肯定してしまった。

聞いてきた内容はわからない。

聞こうと思った時。

「では、帰りの会を始めます」

ちょうど先生が来た。

終わると一ノ瀬は先に帰ってしまい、聞けなくなってしまった。

明日聞けばいいか。

僕のそんな考えは甘かったと思い知らされることになる。



「春樹、おはよう」

「母さん、おはよう」

朝、リビングに降りて学校に行く準備をしていた時。

家のチャイムがなった。

「はーい」

そう言って母さんは玄関に行く。

ドアを開けると聞き覚えのある声が聞こえた。

何やら話している。

玄関に行くと。

「あ、はー君!」

一ノ瀬がいた。

「な、なんでいるの?」

僕がそう聞くと一ノ瀬は不思議そうに言った。

「なんでって。昨日一緒に行こうって言ったよ?家が近いから」

そんなことを聞いた覚えはない。

だけど心当たりはある。

あの聞き逃した時だ。

結構今日聞くのでは遅かったか。

それよりも。

「家が近いの?」

僕がそう聞くと、一ノ瀬の代わりに母さんが答える。

「お隣らしいわよ!」

「え」

「そう、隣なんだよ!」

隣って家にずっと住人がいなかったところだ。

何か思い出せそうで頭が痛くなる。

「大丈夫!?」

そう一ノ瀬に心配される。

そんな中、1つだけ思い出せたのは。

「……かれんちゃん」

そんな名前の子と話していた気がする。

僕がそう言うと一ノ瀬は嬉しそうに笑っていた。

「……よかった」

一ノ瀬はそう言う。

一ノ瀬、なんだろうか。

昔隣の家にいたかれんちゃんは。

でも名前は思い出せても他は何も思い出せない。

このパーツを埋めていければいいな。

そう思った。

そのあと、一ノ瀬と登校した僕は男子に問い詰められた。

……なんとかかわしたけど。
< 2 / 8 >

この作品をシェア

pagetop