余命宣告された君と恋をした

3

「そういえば、そろそろ体育祭だね」

登校中、僕がそう言うと一ノ瀬は目を輝かせて言う。

「ほんと!?楽しみだなぁ!」

「もしかして運動好きなの?」

僕がそう聞くと、一ノ瀬はうなずく。

「そうなんだ、いいね」

「はー君は?運動は好きじゃないの?」

そう聞かれ、僕は首を振った。

「全然好きじゃないよ、目立つのは好きじゃないから」

「そうなんだ」

それ以上、一ノ瀬は何も聞いてこないで次の話題にしてくれた。



「参加する競技を決めたいと思います」

学級委員の須田君がそう言う。

学活の時間をとって体育祭の話し合いをしている。

係を決めたので次は競技決めだ。

「ではまず障害物競走に出たい人」

「はい!」

そう元気よく手を挙げたのは一ノ瀬。

「ほかにいませんか?」

そう須田君が聞くと複数の女子が手を挙げる。

障害物競走をやる人は決まった。

「一ノ瀬、障害物競走したかったの?」

僕がそう聞くと一ノ瀬は首を振った。

「いや、とりあえず一番初めに言われたやつに出ようかなと思って」

「適当だったんだ」

思わず笑ってしまう。

僕が笑っているのを見て一ノ瀬も笑顔になった。

「では次にリレーに出たい人」

須田君がそう言うと、男子の一人が手を挙げる。

清水君だ。

するとこっちを向いて言った。

「加賀君がいいと思います」

「……え」

思わずそう言う。

呆然としている僕を放っておいて須田君は話を進める。

「なぜ加賀君がいいと思ったのか言ってください」

「それは中学生の頃、陸上部に入っていたからです」

なんで、知ってるんだ。

目立ちたくなかったから他のにしようと思ったのに。

清水君はこっちを向いてニヤニヤと笑う。

……はめられた。

恐らく須田君もグルだ。

須田君は同じ中学校だった。

それに……、いじめてきた張本人だ。

あいつは自分が一番じゃないと気が済まないタイプだから中間テストの事を恨んでいるんだろう。

それか、一ノ瀬のそばにいるのが気に食わないか。

どうしよう。

頭が上手くまわらない。

そんな僕を見て、一ノ瀬が手を挙げた。

「はい、一ノ瀬さん」

「加賀君じゃなくてもいいと思います」

その言葉にほとんどの男子がどよめく。

ほとんどが敵ってことか。

「なぜですか?」

「だって、本人は嫌がってるんですよ」

「という事ですけど、加賀君。やらないんですか?」

そう圧をかけてくる。

「……やります」

口が動いていた。

「じゃあ、加賀君はリレーという事で」

そう言って須田君はどんどん話を進めていく。

「はー君、よかったの?」

そう一ノ瀬が聞いてくる。

「うん、いいんだ」

中学生の頃は休んでしまった。

だけど今回は。

頑張ってやる。
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