余命宣告された君と恋をした

4

春樹side

一ノ瀬が隠し事をしたあの日から。

僕らの間には微妙な空気が流れていた。

話し始めても話題はすぐに終わる。

そんなことが約一か月続いている。

そんな僕たちに提案したのは母さんと一ノ瀬のお母さんだった。



「ついたね」

そう僕は一ノ瀬に話しかける。

「遊園地だぁ!」

一ノ瀬はまだ入ってないのにはしゃいでいる。

思わず笑顔になる。

でも、僕を見た一ノ瀬はすぐに無口になった。

怖い顔でもしてたかな。

また会話が止まる。

だめだ。

今日は一ノ瀬に楽しんでもらうために来たんだから。

会話をしないと。

「じゃあ、行く?」

「う、うん」

ぎこちないまま、僕たちは遊園地に入った。



でも、僕は入ってから少し安心した。

「はー君、次はあそこに行こ!」

そう目をキラキラさせて一ノ瀬は言う。

僕は病院に行ったばかりの一ノ瀬を無理させないようにと母さんに言われているため、気を付けてみているがとても楽しい。

やっぱり、一ノ瀬が楽しそうな姿を見ていると楽しい気分になってくる。

この感情はなんだろう。

わからない。

でも一つ言えることといえば。

一ノ瀬が関わってるという事。



華怜side

はー君は考え事をしながら歩いているように見える。

「はー君?」

そう私が言っても笑って大丈夫だよと答えるだけだ。

心配だな。

今日はずっと気を使われてる気がするし。

二人とも喋らずに歩いていると。

「うわぁ、観覧車だぁ!」

私の目の前には大きな観覧車があった。

「ほんとだ、大きいね」

「これは最後に乗る?」

「そうしようか」

そんな話をする。

よかった。

会話出来てる。

そのことに安心しながら他のところにも行く。

「じゃあ、そろそろ行く?」

そう言って、はー君が指さしたのは観覧車。

確かにあんまり長くいないようにってお母さんに言われたからね。

「うん、行こ!」

私たちは二人で観覧車に乗った。



春樹side

観覧車からは綺麗な景色が見れる。

そのことを一ノ瀬も楽しみにしていたみたいだ。

乗ってからはずっとはしゃいでいる。

てっぺんに来ると同時くらいに。

一ノ瀬は口を閉じた。

そしてこっちを向く。

「どうした?」

僕がそう聞くと、一ノ瀬は泣きそうな顔をしながら言った。

「はー君、聞いてくれる?」

僕がすぐに頷いた。

すると、一ノ瀬は衝撃的な一言を口にする。

「私、余命宣告されたの」

「……え?」

僕はその言葉を飲み込めず、呆然としてしまった。
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