余命宣告された君と恋をした
春樹side

リレーが終わって、僕は一ノ瀬のところに戻る。

「一ノ瀬、ただいま」

僕は笑顔でそう言う。

久しぶりの笑顔だった。

「おめでとう!はー君、すごかったね!」

一ノ瀬はそう言ってくれる。

それを言い終わるくらいの時。

一ノ瀬が頭を抱える。

「一ノ瀬?」

そう聞いても、一ノ瀬から返事は帰ってこない。

次の瞬間、一ノ瀬の体が傾いた。

とっさに手を伸ばし、一ノ瀬の体を抱える。

「一ノ瀬!」

一ノ瀬は完全に気を失っていた。

僕は一ノ瀬を抱えて、先生のところに連れて行った。



あの後、救急車を呼んで僕は一ノ瀬のお母さんと一緒に乗せてもらった。

だが、さすがに話を聞くのはダメだという事で僕は待合室で待っていた。

しばらくすると一ノ瀬と一ノ瀬のお母さんが出てくる。

「一ノ瀬!大丈夫!?」

思わず大きな声で言ってしまう。

「病院内では静かにしてください」

そのせいで看護師さんに注意されてしまった。

一ノ瀬のお母さんは真面目な顔をして言った。

「一旦家に行こうか」



「で、一ノ瀬は大丈夫だったんですか!?」

一ノ瀬の家に着くと、僕はすぐに聞く。

一ノ瀬のお母さんは真面目な顔で口を開こうとする。

だが、それを止めたのは一ノ瀬だった。

「何もなかったよ、安心して」

一ノ瀬はそういう。

「ほんとに?ほんとに何もなかったの?」

僕がそう聞くと、一ノ瀬は元気に笑って言う。

「ほんとだよ~!大丈夫!私は元気だからね!」

ほんとだろうか。

何か隠している気がする。

でも、言うつもりはないみたいだ。

僕に言えないこと、なのかな。

なぜか心が痛む。

僕はそれを無視して、笑って言った。

「大丈夫ならよかった。じゃあ、僕は帰るね」

上手く笑えたかわからない。

だけど、早く帰りたかった。

一ノ瀬に隠し事をされたのがなぜか悲しかったから。

「じゃあね」

そう言って帰った。



華怜side

「じゃあね」

そう言って、はー君は帰っていった。

悲しそうな顔をしながら。

ごめんね。

まだ言えないの。

いつか言うから。

それまではいつものはー君で接してほしいの。

余命宣告された私をどう思うかわからないから。
< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop