『 最後から、始まる。 』~卒業~ きみと過ごす残り1ヶ月

初めて下りる駅



「あ、こっちかな…」



杉山と一緒に歩く



このままずっと

杉山の後ろを

ついて行きたいな



どこまでも…



そう思いながら

杉山の背中を追って歩く



少し空が暗くなってて

星が出そうだった



「まだ日が暮れるの早いね」



「そーだね…」



「浅倉、寒くない?」



「うん、寒くないよ」



階段を下りようとしたら

聞き覚えのある音が聞こえてきた



•*¨*•.¸¸♬︎•*¨*•.¸¸♬︎•*¨*•.¸¸♬︎



少しずつ

音が近くなって

人だかりができてた



「浅倉、こっちの方がよく見えるよ」



杉山が小声で私に手招きした



「うん、ありがと」



少し背伸びをして音の方を見た



動画で見てた人が

目の前にいる



いつもイヤホンを通して聴こえてた音が

生で聴こえてくる



んー…

いい曲

好きな声



たしか

私と同じ歳くらいなんだよね



公表してないけど

去年まで高校生だったとか…



すごい

こんなに人がいるのに

緊張しないのかな…



私だったら

絶対震えが止まらない



今も

私が歌うんじゃないのに

足が震えてる気がする



「浅倉、寒いの?」



曲の間に

杉山が聞いてくれた



「んーん…寒くないよ
なんか、感動して…
私が緊張してるみたい」



そう言った声も

少し震えてた


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